私はうつ病の経験者です。今から30年近く前にうつ病と診断を受けました。当時は心の病気への周囲の理解も今ほどはなく、心の病で休職なんてとんでもないというような感じでした。うつ病であることは隠していました。そんな私のうつ病発症から完治までの体験談です。私の場合の話ですので人それぞれ違う部分もあるかと思います。それでも今、うつ病で苦しんでいる人の回復へのヒントになったり少しでも支えになれたなら幸いです。
うつ病になりやすい人
①まじめで責任感が強い②謝り癖がある③断ることが苦手④環境の変化に弱い⑤過去の心の傷が深い人⑥家族にうつ病経験者がいる⑦自己肯定感の低い人⑧身体的な悩み(病気やコンプレックス)を抱えてる人
上記は、ほんの一例ですがこんな感じの条件が重なると発症のリスクが高まるようです。 私の場合は、当時の自分を振り返ると⑥以外は全て当てはまっていました。
私の発症理由
私は6歳の時に母親を亡くしその後に義母に育てられた期間があり、その時に精神的虐待を受けていました。唯一、甘えられる存在の父も弟に独占されてしまっている状態で私はいつも一人でも大丈夫なしっかりした長女として育ちました。甘えることの出来ない子供時代を経て18歳高校卒業で就職して家をでました。そんな私でしたが職場にも恵まれ友達にも恵まれ彼氏もできて楽しくて自由な生活を送っていました。そんな順風満帆とも思われる中でさまざまな事が起こり始めます。26歳の夏でした。
5年間一緒の職場で働いていていつも姉のように支えてくれた先輩が妊娠したために退職しました。いつも一緒だったので心に穴が開いた感じになり寂しい気持ちになってしまいました。次にやはり仕事関係で他社ですが仲良くしていた先輩の自殺。止めてあげられなかった、そこまで苦しんでいることに気付いてあげられなかった、さまざまな後悔で無力な自分を責めました。そして当時つきあっていた彼との別れです。全面的に信頼し頼り切っていて結婚も考えていた事、そして浮気された事、本当にショックでこれからどう生きていけばいいのかわからなくなりました。この3つの出来事が3週間くらいの間に集中して起こり、私のこころが崩壊しました。
発症の状況
自分に降りかかった3つの出来事から身体的にでた症状は①眠れない②食べれない③涙が止まらないというものでした。もちろん気持ちもものすごく落ちていて仕事も出来ない状況になってしまいました。一人暮らしなので無職になるわけにもいかない。頼れる実家もない。当時の記憶をたどるとそれは底なしブラックホールを永遠に落ち続けている感覚でした。
病院へ
ふらふらの状態で病院を探し駆け込みました。先生は私の話を1時間くらいかけて丁寧に聞いてくれました。そして出た診断がうつ病でした。薬も数種類、処方されました。先生からは実家に帰ることと仕事を休むことを勧められましたが、どちらも厳しいとお話しして仕事を続けながら、一人暮らしを続けながら通院治療をすることにしました。幸い友達には恵まれていたので、友達だけには病気を打ち明け支えてもらうことになりました。当時を思い出してもこの時の友人たちには感謝の気持ちしかありません。
人生で初めて飲んだ睡眠薬は、飲むとすぐに眠れるし眠りも深い、そして波はあるものの気持ちも少し安定してきて食欲も出てきてガリガリに痩せていた体重もみるみる増えていきました。
通院治療開始
通院治療を始めました。最初のころは1週間に1回くらい通ったような気がします。その都度、体調や近況報告を行いながらでしたが通院治療も先生が丁寧に話を聞いてくれました。今はカウンセラー(心理士)や精神保健福祉士などがカウンセリングを行ったりするみたいですが当時は先生がみっちり向き合ってくれていました。そして診察が終わるとお薬を処方されるといった感じでした。
自分の心の変化 発症から1~4か月
発症時のパニック状態から投薬治療を行い、寝れるようになり食べれるようになり涙も止まって少し冷静さを取り戻しはじめたのは、最初の通院から1か月が経過したころだったと思います。もちろん、その時点ではまだまだ心は不安定だし気持ちも沈んでいましたが、ふっと思ったのです。なんで私はうつ病になってしまったんだろう?同じようにつらい思いをしてもうつ病にならない人もたくさんいます。私の何が足りなかったんだろう?どういう考え方が出来ればいいんだろう?とさまざまな思いがこみ上げてきました。当時はネットが普及される少し前でしたので本屋さんに行っては本を買い、たくさんの本を読みました。うつ病の本はもちろんですが、薬の本、心の本、などなど。運について書かれた本とかも読みました。様々な本を読みながら自分の生き方、考え方が徐々にポジティブな方向に変わっていきました。そして不思議なんですが本を読んでいる時は不安な気持ちが消えるのです。これには理由があって人間の脳って同時に2つの事は考えられないように出来ています。考えてみれば当たり前のことですよね。だから不安な気持ちが強くなる時はお気に入りの本を読む、とにかく無心で読む、本の内容に集中することで余計な事は考えなくなります。その間は不安な気持ちから離れられるのです。そして気付いたのです本を読むことって心の栄養になるんだなと。
自分を大切に生きる 発症から5~8か月
自分を責めたり自信をなくしたり自己肯定感が低かったりで生い立ちからそんな自分でしたが病気の原因はここにあるのかもしれないと色々な本を読み思いました。としかく自分を許して大切にしてあげようと決めました。体調の回復に伴い、外出することも増えていきました。自分の行きたいところに行って会いたい人に会って、やりたいことをやる。幸せだと思える今日を積み重ねていくことに注力しました。それから私に圧倒的に足りていなかったこと、当たり前の事に感謝する気持ちです。今日、生きていることも当たり前じゃない。いつも周りにいてくれる大切な人たちが明日もいてくれるとは限らない。そんな当たり前の今に、感謝しながら生きようと決めました。病気になって辛くて大変でまだ薬も手放すことはできないけれど、周りで支えてくれる人たちに今まで以上に感謝しながら過ごしていこうって決めました。
ある日、突然に薬をやめられた理由 発症から9か月目
気付けば発症から9か月が過ぎていました。通院は2週間に1回になっていました。快方へ向かっていることは自分でも感じてしまいましたが薬をやめて又、悪化してしまうことが怖かったし先生からは薬をやめるのは、もう少し先だといわれていました。そんな中、ある出来事がおきました。
学生の時から仲良くしていた男友達、二人でドライブに行ったときのことです。彼は言いました。ずっとそばにいるから大丈夫だよ。って。その言葉は、子供時代から誰にも甘えられずに生きてきた私にとって涙が出るくらいに、何だか嬉しい言葉でした。すごくすごくホッとして身体が軽くなったような不思議な感覚になった事を覚えています。その日は幸せな気持ちで帰宅したのですが帰宅直後に大変なことに気付くのです。
薬袋がない!!私は薬はすべてバラバラにして小さなポーチに入れていつも肌身離さず持ち歩いていたのですが、どこを探してもそのポーチが見つからないのです。どこで落としたんだろう?夜の遅い時間から出かけていた場所に探しにいくこともできず、病院もやっていない。仕方なくその日は薬を飲まずに寝ました。翌日、薬を飲まない影響はなにもないので、そのまま出勤して朝も昼も薬なしで仕事をしました。仕事も忙しく病院の開いてる時間に帰宅することも出来ず仕方なくその日の夜も薬なしで眠りにつきました。さらに翌朝、なんともありません。もしかしてこのままやめれるかも?そしてそのまま薬を飲まない日が1週間ほど続き通院日に先生に事実を伝えると、「もう大丈夫そうだね。このまま今日で終わりにしましょう。もし又、何かあればすぐに来て下さいね」と言われ、最後は本当にあっけなく終わりの日を迎えることが出来ました。そして最後に先生から言われた言葉、「この病気になると出産後に産後鬱になる可能性があるからね、注意してね」私は、うつ病克服から5年後と8年後に出産しましたが、産後鬱にはなりませんでした。
拍子抜けしてしまうような最後でしたが、男友達の優しい言葉にすごく救われて、その直後に薬を紛失してしまい断薬になりました。この2つの出来事、どちらか1つが欠けていたら断薬はでいなかったでしょう。完治はなかったでしょう。
うつ病を経験して思ったこと
めちゃくちゃ辛い病気です。本当に本当に辛くて苦しいものでした。今、うつ病の方、大切な人がうつ病で苦しんでいる方、本当に辛いと思います。だからまず、ご自分を最優先に、苦しくならない方向に進んでくださいね。
ただ、うつ病を経験して思ったのは当時、辛い出来事が重なってしまったときに苦しい辛いに気持ちが持っていかれて自分の事しか考えられなくなっていたなと思うのです。子供を生み育てて気付いたのですが人って自分のことよりも自分以外の大切な人のための方が力が出たりもするんですよね。だから自分が最優先ではあるんだけど、自分のまわりの大切な人たちのことも考えるようにしてバランスよく日々を過ごせたらいいのかなと思います。
そして健康が一番大切ということにも気付きました。元気だからこそ色々出来るし幸せなんですよね。だから、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、過度なストレスを避け、いつも健康で元気でいられるように心がけたいです。元気で健康でさえいれば色々な困難出会ったときでも何とかなるから。そして、もしも辛い困難に出会ったときにはつらい気持ちに飲み込まれないように、この困難から学ぶべき事を冷静に探すことも大切。そして最後に「いつも笑顔をわすれずに」辛いときこそ笑え!!です。笑顔は幸せを運んでくれます。
うつ病で辛い方が元気になりますように。